独自セキュリティが特徴的なAbraの仮想通貨レンディング・金利サービスの紹介

資産運用

仮想通貨レンディングサービスを提供しているAbraについて記載します。

AbraはBlockFiやNexoなどと同様にアメリカでビジネス活動をする会社です。

アメリカは仮想通貨の投資者保護に対する規制が非常に厳しいことで有名です。

アメリカ国内もしくはアメリカ人を対象にクリプト事業を行っている会社はどこも厳しい規制下に置かれ、ライセンスを付与されて営業をしている実情があります。

こういった関係から、業界最大手の取引所であるBinanceやHuobi Global、その他大手取引所はどこもアメリカ人を顧客として受け入れていません。

アメリカ国内およびアメリカ人を対象にしたクリプト事業を行う場合、セキュリティレベルなども厳しく設定され、規制された規定内で営業をしているのです。

こういった関係から、大手のBlockFiなどは顧客の預かり資産の95%をコールドウォレットで管理しています。

ユーザから見ると嬉しい話ですが、アメリカの企業はとにかくセキュリティに対しても、アメリカ国外のレンディング会社と比較しても厳しく対応しています。

Abraも、アメリカで営業している関係上、セキュリティに対して独自の対応を取っています。

そして、他のレンディング会社と比較しても、Abraのセキュリティ対策はAbraの特徴の一つともなっています。

今回は、筆者が実際に利用している観点からAbraのメリット、デメリットを記載していきたいと思います。

Abraの概要

Abraは、2014年にBill Barhydtにて、アメリカのシリコンバレーで設立されました。

創業者のBillは、ゴールドマンサックスでソフトウェアエンジニアとして働いていた元エンジニアです。ゴールドマンサックの元エンジニアと言えば、日本のビットフライヤーの加納さんも同じですね。

また、BillはNetscapeの元ディレクターでもありました。

創業後、まず2015年9月に、AbraはRRE VenturesやArbor VenturesなどのVCからシリーズAの資金調達で1200万ドルもの大型資金を調達しています。

Abra Raises M In Series A Funding For Its Bitcoin-Based Remittance Service | TechCrunch
Abra, a remittance service built on top of the Blockchain, has closed million in Series A funding. Investors in the round include Arbor Ventures, RRE Ventur...

そして、2018年には金融機関の収益業務に関わるシステムのコンサルティング業務を行っているSimplexと提携しました。

この提携により、顧客がAbraのWebサイトと携帯のアプリ上で、VisaとMasterCardを使用してビットコインを購入できるようにしたサービスを開始しています。

また同年、2018年6月には、ウォールストリートジャーナルにて「2018年に注目すべきテクノロジー企業トップ25」の1つに選ばれています

AI, Blockchain and Cybersecurity Startups Dominate 2018 Tech Companies to Watch List
The Wall Street Journal spotlights 25 emerging leaders in hot corners of the tech industry

2018年当時は仮想通貨だけでなく、株式やETFもAbraで購入することが出来たため、非常に話題になりました。

今でいうRobinhoodのアプリの先駆けのようなサービスをAbraはリリースしていたのです。

(なお、2021年には、株式やETFを購入できるサービスは停止されており、仮想通貨に注力したサービスに切り替えて運営されています)

そして財務面では、2021年に再度大型の資金調達を実施し、シリーズCで5500万ドルもの資金調達を成功させています。

5500万ドルもの大型資金調達はAbraのビジネスを期待されている証拠だと思います。

そして、現在Abraには100万人以上のユーザがおり、10億ドル以上の顧客預かり資産を運用している企業に成長を遂げています。

Abraのサービス

現在Abraでは主に個人投資家向けに下記3つのサービスを提供しています。

  1. Earn
  2. Trade
  3. Borrow

Abra Earn

Abra EarnはAbraに預けておくだけで、利息を得ることが出来るレンディングサービスです。

利息を得られる仮想通貨と金利

利用できる仮想通貨は、下記の通り。

仮想通貨

  1. BTC
  2. LTC
  3. BCH
  4. ADA
  5. XLM

ステーブルコイン

  1. USDC
  2. USDT
  3. TUSD
  4. USDP

利用できるコインは、他レンディング会社と比較すると非常に少ないです。

しかし、これは競合のBlockFiと同じように選りすぐりの信頼できる仮想通貨だけ対応している戦略なのかもしれません。

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金利・利息について

利息は1週間に一回払い出されます。そして、複利で増やしていくことが可能です。

金利の高さは、BlockFiやNexoなどアメリカで展開しているレンディング会社と同じような金利率で設定されています。

ヨーロッパのYouhodlerやCoinloanよりは数パーセント低い金利率となっていますが、アメリカで運営している関係上仕方ないのかもしれません。

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なお、金利は、市場の動向に合わせて月単位で変動します。最新の金利は下記を参照ください。

Boost
Abra Boost is a new product offering that will enable all qualified investors to deposit and generate yield on their digital assets.

CPRX(Crypto Perx)トークンとは

AbraではCPRXというトークンを利用できます。

CPRXトークンとは、スイスのThe Crypto Banking Allianceが発行したERC20ベース(イーサリアム)のリワードトークンです。

総供給量は30億CPRX。

ICOで発行されていないため、どの程度のトークンが市場に出回っているかは把握できていませんが、このCRPXトークンはAbraのビジネスと強い関係があります。

というのも、CPRXトークンはAbraでしか使えないからです。

これは私の推定ですが、おそらくCRPXトークンの発行はAbraが規制の厳しいアメリカではなく、スイス法人を使って行ったと思われます。

そして、このCRPXトークンを保有しているとAbra上で様々な特典を利用することが出来るようにしています。

CPRXを使ったAbraの主な特典は下記の3つです。

  1. Abra上でトレードを行った場合、すべての取引の0.5%をキャッシュバック
  2. アフィリエイトプログラムにて、25$分の報酬を紹介者と入会者に配布
  3. Abra Earnにて、CPRXトークンの保有量に合わせて最大5%までAPYを増加

CPRXトークンはBittrexで取引が可能です。

他にUniswapでも可能ですが、取引のほとんどがBittrexで行われています。

なお、CPRXトークンの詳細は下記にホワイトペーパーと合わせて、記載されています。興味のある方は下記URLからホワイトペーパーを確認してみてください。

https://www.abra.com/crypto-perx/

Abra Borrow

Abra Borrowは、Abraに預けた資産を担保にローン融資を受けることが出来るサービスです。

  • 担保にできる通貨は、BTCとETHの2通貨のみです。
  • ローン出来る通貨は、TUSD,USDC,USDPの3通貨のみです。

利息口座では、USDTを受け付けていますが、融資する通貨ではUSDTは利用できません。

これはアメリカの規制のためか定かではないですが、USDTを扱っていないのは好感が持てます。

USDTはペッグされている資産が本当に裏付けされているか怪しいです。USDTを扱っていない点は良いと個人的に思っています。

なお、ローンにおけるLTVは下記の4パターンから選べます。

  • 15%のLTVで0% APR
  • 20%のLTVで3.85% APR
  • 33%のLTVで6.75% APR
  • 50%のLTVで9.95% APR

最新のLTVなどは変更される可能性があります。最新情報は下記を参照ください。

Borrow
Use your digital assets as collateral to get a crypto loan. Get flexible loan terms with 0% APR and 15% LTV.

Abra Trade

Abraのプラットフォーム上で仮想通貨のトレードを行うことが出来ます。

これがAbra Trade機能です。

Abra EarnおよびAbra Borrowでは利用できる仮想通貨が非常に少なかったですが、100以上の仮想通貨ペアのトレードに対応しています。

トレード機能ではそれ以外の通貨も多く利用できるのです。

なお、公式発表はありませんが、Abraのトレード機能を裏で支えているのはBittrexだと思います。

実は、Bittrexでは以前までAbraのカストディサービスを行っていました。現在も一部はBittrexを使用しているはずです。

また、以前Abra上でMoneroのトレードが可能だったのですが、BittrexがMoneroのサポートを止めたと同時にAbra上でも出来なくなった経緯があります。

Bittrex to Delist 'Privacy Coins' Monero, Dash and Zcash
While Bittrex gave no reason for the removals, exchanges around the world have been moving to delist coins that seek to hide the activity of their users.

Abraのセキュリティ

前述したとおり、Abraはアメリカに本拠を置く会社でアメリカの厳しい規制下でビジネスを行っています。

Abraでは米国内のユーザも顧客対象としています。

よって、規制されている為、セキュリティレベルは高い企業だと言えるでしょう。

また、Abraの特徴として、Abraで使用されるウォレットはハードウェアウォレット扱いなのです。

ウォレットのリカバリーフェーズは顧客が自分で管理する必要があるのです。

これは他のレンディング会社にはないAbra特有のセキュリティ対策だと思います。

もし、Abraでウォレットを作成した時のリカバリーフェーズを無くしてしまった場合、Abra側も復旧できない、サポート出来ない仕様となっているのです。

Abra上でトレードするときも、ウォレットのプライベートキーの署名が必要になります。

これはある意味、自分で完全にコントロール出来ていることを意味しますが、無くした場合、一切のサポートも受けられないことを意味します。

実際私もこの仕様を気づかずに、携帯を変えたのですが、その際にAbraのカスタマーサポートから教えてもらってこの仕様を教えてもらいました。

携帯を変える場合は、自分でリカバリーフェーズを作成して、新しい携帯にリカバリーフェーズを入れなおす必要があるのです。

古い携帯からリカバリーフェーズを取らずに新しい携帯へ移行した場合、資産をゴックス(紛失)しますので注意が必要です。

Abraのホームページ上でも下記記載があり、注意を促しています。

(正直に、分かりづらいと思いますので注意が必要です)

Abraのカスタマーサポート

Abraのカスタマーサポートですが、リアルタイムのチャット機能はなく、メールでの問い合わせ、チケット管理の仕様となっています。

私は口座開設時および携帯移行時に数回連絡しましたが、非常に迅速に返信して貰えました。

同じアメリカで営業しているBlockFiやNexoは顧客が多すぎるためか、カスタマーサポートに連絡しても、返信すらないというのが当たり前であったりします。

大手のカスタマーサポートと比較して、Abraのカスタマーサポートのレスポンスは早く、良いサポートと言えるでしょう。

Abraのモバイルアプリ

Abraでは携帯のアプリで資産を管理する仕様となっています。

Web上では使用できません。携帯では、iOSAndroidでモバイルアプリが用意されている。

2FAも設定でき、シンプルで使いやすいです。

特にこれと言って、特徴的な点は何もないですが、資産を管理するだけなら何も問題ないです。

Abraの長所と短所

最後にAbraの長所と短所をまとめておきます。

長所 短所
アメリカの規制下でビジネスしている為、信頼性が高い APYがYouhodlerなどと比べると低い
ウォレットのリカバリーフェーズは自分で管理できる
カスタマーサポートの対応は早い
モバイルアプリはシンプルで使いやすい

筆者は、資産分散管理の観点からAbraを使用しています。

アメリカで厳しい規制下の中で営業している点は、ヨーロッパやアジアで営業している会社よりも信頼性が高いとも思っています。

ただし、APYが低い点はデメリットだとも思っています。

高APYを提供しているレンディング会社を使用したい場合は、ヨーロッパのYouhodlerやCoinloanの方が都合が良いかもしれません。

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Abraをおすすめできるユーザ

2021年に大型資金調達を実施しており、これから期待される会社の一つでもあります。

まだあまり有名ではないCPRXトークンに投資しながら利息サービスを使用するという戦略も良いかもしれません。

また、私のように既に他のレンディング会社を使用していて、資産を分散管理したいユーザにはおすすめと言えるのではないでしょうか。

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