現在、タイでは数多くの仮想通貨取引所がビジネスをしている状況だが、タイは仮想通貨の人気がすさまじく、その中でも群を抜いて人気を博している取引所がある。
それが、Bitkubだ。
今回はタイでトップの取引高を誇る仮想通貨取引所のBitkubについて記載してみたい。
Bitkubとは
Bitkubの事業変遷について、タイの仮想通貨の歴史をまず振り返ってみたい。
Bitkubは2016年に設立された仮想通貨取引所である。
2016年のBitkub設立当時、タイにはまだ仮想通貨に対して法整備されていない状態であった。
仮想通貨の取引業者はその当時から数社あったのだが、タイで仮想通貨トレードを行うということは、法的にグレーな状態であったのだ。
日本と同じように法律が出来る前の見なし業者として営業していたとイメージして貰えれば分かりやすいかもしれない。
筆者自身も2016年当時からタイの仮想通貨市場を利用している。
タイのビットコイン価格は、いわゆるプレミア価格が良く発生していて、世界と比較して5%くらい高い値段でやりとりされていたが、その当時のビットコインの価格はまだ2万バーツほどであった。
世界と比較すると、価格は割高であったし、何より資金を取引所に預けることに対して、気が引けるような雰囲気があった。
顧客の資産保護などはないだろうし、法律もないのだから、何かあっても完全に自己責任で利用しなければならない状況であったのだ。
また、取引所が用意しているシステムも決して良いものではなく信頼性に欠けていたように思う。
タイの仮想通貨マーケットは、2018年に法律が出来る前までは、アンダーグラウンドな世界だったと言っても過言ではないだろう。
そして、2017年の仮想通貨バブルが発生したことによって、タイでも仮想通貨が一般的にも認知され始めた。
有名になるにつれ、仮想通貨を利用した詐欺なども横行したことから、タイでも仮想通貨に対する法整備を行うことになり、2018年5月にタイSECによって、デジタル法案が施行され、法律が整備されることになった。
当時、タイSECからライセンスを付与されず廃業した業者も数多くあったが、BitkubはBX Thailand、Satang Proと共に無事に取引所ライセンスを取得した。その当時取引所ライセンスを取得できたのはこの3社のみである。
そして、当時はBX Thailandという会社がタイの仮想通貨市場のトップシェアを誇っていた。
筆者もタイの仮想通貨取引所を利用する場合は、BX Thailandのみを使っており、ほぼBX Thailandがタイの仮想通貨市場の取引を独占していた。
Bitkubについては存在は知っていたが、BX Thailand以上に怪しい会社だと思い利用は避けていた。
当時のBitkubはアルトコインを多く上場させてBXとの差別化を図っていたが、顧客の獲得は出来ずに営業を細々と続けているような状況だった。
その当時は今と違って、タイの仮想通貨マーケットはBitcoinの取引高が特に高く、アルトコインは全くと言っていいほど人気がなかった。
2018年SECの金融ライセンス取得後もユーザはBX Thailandを利用し続け、Bitkubは大きくマーケットシェアを離された2番手あった。
2019年8月までこの状況は続いていたのだが、同年9月にBX Thailandが突然の閉鎖をウェブサイト上で公表すると事態は一変した。
この当時、取引所ライセンスを持っていたのは、BitkubとSatang Proだけであったのだが、行き場を失ったタイの仮想通貨トレーダーはBitkubへトレードの場を移すことになった。
BitkubがBXの顧客を全て請け負うような形でユーザの大移動が起こったのだ。
実は筆者もその時にBitkubへ移動したユーザの一人だ。
今でこそ、市場シェアを独占するBitkubだが、2016年設立から2019年まで3年ほど苦節の時間を過ごし、BX Thailandが自主閉業したことにより、云わばラッキーな形で市場を独占することに至ったのである。
そして、今では誰もが知る取引所としてタイを代表する企業となった。
現在までにZipmex,Upbit,Bitazzaなど多くの取引所が開業しているが、Bitkubの市場独占の状態は崩せていない。
ラッキーな形で市場を独占することになったのだが、競合が参入してもBitkubから市場シェアを奪うことが出来ておらず、独占したままの状態を維持している事は、Bitkubの実力ともいえるだろう。
Bitkubの起業から現在に至るまでの変遷は以上である。
次にBitkubの会社構成についてみていきたい。
Bitkubの会社構成
BitkubはBITKUB CAPITAL GROUP HOLDINGS COMPANY LIMITEDを持ち株会社として頂点に置き、その下に事業ごとに会社を分社化する組織体制を取っている。
分社化された会社の一覧は下記の通り。
会社名 | 設立 | 資本金 | 主な業務内容 |
BITKUB BLOCKCHAIN TECHNOLOGY COMPANY LIMITED | 2018年2月28日 | 7.78億THB | ブロックチェーン関連のサービス提供、開発。
実績:KUBコインおよびBitkubチェーンのリリースなど |
BITKUB CAPITAL GROUP HOLDINGS COMPANY LIMITED | 2018年2月6日 | 7,000万THB | 持ち株会社 |
BITKUB INFINITY CO., LTD. Company Limited | 2021年11月29日 | 500万THB | Funds entries |
BITKUB LABS CO., LTD. Company Limited | 2020年3月9日 | 500万THB | bitkub ACADEMY、教育事業 |
BITKUB M CO., LTD. Company Limited | 2021年11月26日 | 5,000万THB | 投資コンサルティング業 |
BITKUB ONLINE COMPANY LIMITED | 2016年7月29日 | 4.5億THB | 仮想通貨取引所事業 |
BITKUB VENTURES CO., LTD. | 2020年8月24日 | 1,000万THB | 非金融分野における投資事業 |
BITKUB WORLDTECH CO., LTD. | 2022年1月6日 | 500万THB | 教育事業 |
ユーザが普段使っているBitkubの取引所の正式な会社名称は、BITKUB ONLINE COMPANY LIMITEDである。
また、取引所のシステム開発やBitkubチェーンのブロックチェーン開発は、BITKUB BLOCKCHAIN TECHNOLOGY COMPANY LIMITEDが行っている。
この2つの会社がBitkubのメイン事業であるが、今後多角的に事業を進めていくと思われる。
BitkubのCEO Topp Jirayut Srupsrisopa
BitkubのCEOは、Topp Jirayut Srupsrisopa氏だ。
彼はタイの仮想通貨を語るうえで非常に重要な人物である。
2014年、若干24歳の時ににCoin.co.thを立ち上げ、2016年にはBitkubを立ち上げた連続起業家である。
1社目のCoin.co.thは、ビットコインの販売を行う会社であり、2018年にSECからDealerライセンスを取得して、今現在も営業を続けている。
現在はBitkubの事業にフォーカスしており、タイの街中いたるところで彼を見かけることが出来る。Bitkubの広告塔として第一線に立って宣伝活動を行っている。
現在まだ31歳。
2014年にビットコイン事業で起業するということからわかるように彼の先見の明はすさまじいものがあると思う。
そして、今ではタイの若手代表ともいうべき存在にまでになっている。
BX Thailandが撤退した当時、競合のSatang ProもBitkubと同じように市場独占のチャンスがあったのに、Satang Proは何もすることが出来なかった。
そして、今ではBitkubに取引高、知名度、信頼性全てにおいて大きくつけ放されてしまった。
Bitkubがここまで成長したのも彼の経営手腕であった点が多いのだろう。
Bitkubの概要は以上である。
次にBitkubの取引所の特徴について記載していきたい。
仮想通貨取引所 Bitkubの特徴
次にBitkubの特徴について記載していく。
特徴1.タイでダントツの取引高
まずBitkubの第一の特徴として挙げられることは、タイの仮想通貨市場シェアナンバーワンのトップ企業であるということだ。
タイでは、Bitkub以外に5つの取引所がライセンスを付与されて営業している。
- Zipmex(タイ仮想通貨市場2番手)
- Satang Pro(Bitkubと同様の老舗取引所)
- Bitazza(タイ仮想通貨市場3番手)
- Upbit(韓国トップの海外支社)
- Z.com(日本のGMO海外ブランド)
これらBitkub以外のすべての取引所の取引高を全部合わせても、Bitkubに遠く及ばない状況になっている。
タイ市場を独占しているのがBitkubなのだ。
補足情報だが、似たようなマーケットはインドネシアやインドにも当てはまる。
インドは、WazirXがインドの仮想通貨市場のほぼすべての取引高を上げていて、インドの仮想通貨と言えばWazirXだ。
インドネシアでは、Indodaxがトップの取引所で、インドネシアほぼすべての仮想通貨マーケットシェアを占めている。
タイの代表する仮想通貨の取引所と言えば、Bitkubと言って間違いない取引所なのである。
他の取引所に関しては、取引所のシステム、24時間体制の人員など多くの運営費がかかっており、赤字スレスレもしくは赤字の経営状況であると想定される。
タイ市場を独占しているBitkubに関しては売上は絶好調そして、利益率も非常に高い会社に成長している。
利益的にも一人勝ち状態の会社がBitkubなのである。
特徴2.タイのトップ3に入る銀行が参入
2021年にタイの民間銀行トップ3に入る日本のメガバンク的存在のSCBがBitkubの株式51%を取得し、親会社化した。
SCBはタイの王様が筆頭株主となっている会社である。
Bitkubは、今や最高の後ろ盾を得た会社なのである。
2018年にCoincheckが大規模なハッキングにあったが、同じような事が起こっても救済出来るくらいの財力を持った会社が親会社となっているのだ。
余程の事がない限り、Bitkubが潰れることはもうないと言えるだろう。
特徴3.経営陣は20代,30代の若いメンバーで構成
BitkubはCEOのTopp氏を筆頭に20代、30代前半のメンバーが経営陣として参画している若い会社である。
唯一、ChairmanのSakolkorn Sakavee氏のみ一世代上のメンバーが経営陣として参画している。
彼はもともとタイのE-Sports関連のゲーム開発会社の社長であった。
Bitkubの取引所、ブロックチェーン関連の開発陣は彼の会社に関わっていたメンバーが携わっている。
証券会社や財界出身のメンバーで構成されたZipmex,CPグループで構成されたUpbit Thailand,香港とマレーシアの金融メンバーで構成されたBitazzaなど他のタイの取引所は、どこも大人な人たちで構成されている。
Bitkubは、競合と比較しても若い世代が経営を行っている会社であると言える。
特徴4.独自の取引システムを使用
Bitkubの取引所システムは自社開発を行った自発システムを利用している。
開発は、BITKUB BLOCKCHAIN TECHNOLOGY COMPANY LIMITEDが行っている。
他の競合であるZipmexとBitazzaはAlPhaPointのホワイトラベル、Upbit ThailandはUpbitのホワイトラベル,SatangProはBinanceのホワイトラベルを利用している。
競合はすべて自前で取引所システムを用意しておらず、他社製品をライセンスを払う形で利用しているのだ。
Bitkubは自社グループに開発陣を持ち、技術力が高い会社であることも特徴と言えるだろう。
特徴5.KUBコインを発行
Bitkubでは、自社トークンとしてKUBコインをリリースしている。
独自のBitkubチェーン上で利用できるユーティリティトークンである。
また、取引所の手数料を割安にするなどの機能もあり、今後Bitkubのエコシステムが拡大するにつれて機能を付加していくとしている。
BinanceのBNBトークンをイメージしてもらえれば分かりやすいと思う。
BNBのコンセプトにかなり近い。
総供給量は10億KUBで、そのうちのいくらかは、2021年4月にBitkubの取引所を利用しているユーザに無料で配られた。
このBitkubコインは、ユーザに無償で配られた当時30THBほどで取引が開始されたが、2021年年末には450THBにまで値上がりした。
1年のうちに15倍ほど価格が暴騰したコインとしても知られている。
現在では、Bitkubの取引高の1,2位を争う取引高にまで成長している。
今後も期待されているタイのローカルコインである。
なお、タイ国内ではBitkubのみで売買可能で、海外ではGate.ioとMEXCでも売買可能だ。
Bitkubチェーンとは?
Bitkubは独自チェーンのBitkubチェーンをリリースしている。
イーサリアムの完コピでERC20規格と互換性がある。
BinanceのBinance Smart Chainとほぼ同じブロックチェーンを考えてもらえれば良いだろう。
イーサリアム、バイナンススマートチェーンで出来ることは全て出来る仕様だ。
BSCと同様にイーサリアムとの大きな違いは、送金手数料の安さになっている。
Bitkubチェーンについての詳細は、長くなりそうなのでKUBコインの詳細と合わせて別記事にて記載したい。
今後のBitkubの事業戦略
Bitkubは今後主に2つの戦略を予定している。
株式上場
Bitkubは、アジアのCoinbaseを目指しており、SET(タイの証券取引所)とNASDAQで株式上場(IPO)を目指すと公表している。
筆者はこの可能性は高いと考えている。
すでにタイの株式に上場している会社よりも何倍も高い売り上げを上げており、利益率も高い。申し分ない税務状況である。
また、取引高も他のアジア諸国の取引所と比較しても引けを取らない。
日本の大手BitFlyerやCoincheck、韓国のUpbitには及ばないが、東南アジアではトップの取引高を誇っている。
東南アジアへ進出
現状タイで市場を独占しているが、今後フィリピンやマレーシアなどに参入を予定しているようだ。
インドネシアは既にIndodaxが市場を独占している為、難しいと判断したのだろうが、賢明な判断であると思う。
フィリピン、マレーシアは取引高も低く、仮想通貨自体が盛り上がってないところもあるのでこれから期待できる市場でもある。
Bitkubの評判と筆者レビュー
最後にBitkubの評判と筆者のレビューを記載したい。
結論から言うと、Bitkubの評判は現在は非常に良い。
実は、2021年春先くらいまではBitkubの評判は良くなかった。
なぜなら、2020年にシステム障害を何度も起こし、ユーザに損害や機会損失を与えていたからだ。
本当に何度も何度もシステムがエラーを出したり、時には止まってしまうことさえあった。
そして、2021年1月に大規模なシステムの障害を起こしたことをきっかけにSECタイから警告を受け、新規顧客受け入れ停止処分とシステムの業務改善命令が出されるまでになった。
SECに警告された当時は、ユーザから罵詈雑言を浴びせられており、Bitkubは倒産するかもしれない、ライセンスはく奪されるかもしれないとさえ噂されていた。
その当時は、本当にタイのユーザからも評判は良くなかった。
しかし、今ではシステムを改善し、大きな障害も出ていない。
また、財務面でもSCBが大株主になったため、信頼性が高い会社にもなっている。
KUBコインが暴騰したのもSCBが大株主になってからである。
現在、Bitkubは非常に期待されている会社となっており、KUBコインを見ても評判は良いと言って間違いないだろう。
私自身、タイでトレードするならBitkub一択だと思っている。
Bitkubは、タイで仮想通貨トレードをするなら、まずBitkubで口座開設するべきとおすすめできる取引所だ。
なお、タイの仮想通貨の法律、規制については下記記事に詳細を記載した。タイの仮想通貨トレードに興味があれば、ぜひこちらも参考にしていただきたい。