タイは仮想通貨の規制が整備されており、仮想通貨に対してフレンドリーな国として知られている。
日本とは異なり、DogeやSHIBなどのMemeコイン、SOLやAVAXなどの新興スマートコントラクトコインもタイではローカル通貨のタイバーツ(THB)で取引可能だ。
驚くかもしれないが、ドージやSHIBなどはタイ人の間ですさまじい人気があり、取引高も高い。
タイでは、Binanceへの人気も異常に高く、2021年は、PancakeSwapのBinanceスマートチェーン上でのDeFiが世界で大流行したが、トップのユーザ流入(PV数)がタイだった月も多かった。
仮想通貨の取引高は、世界と比較しても高く、東南アジアではトップレベルだ。
また、バンコクやチェンマイ、プーケットなどの大都市だけでなく、タイ全国の地方都市の街中でも仮想通貨業者の広告をいたるところで見かける。
今や、タイは仮想通貨大国となったと言っても過言ではないのかもしれない。
筆者は、2016年からタイの取引所を利用してきているのだが、その当時はまだタイでも仮想通貨に対する法律が整備されておらず、違法か合法化もわからない非常にグレーな世界だった。
2018年にデジタルアセット法案が成立され、法に則った形でトレードが出来るようになり、今でこそ、街中の至る所で広告を見かけることが出来るようになったが、法整備が出来る前は非常に怪しい世界だったのだ。
筆者自身そんなグレーな時代からトレードを繰り返し、タイの暗号通貨業界については少なからず理解しているつもりだ。
今回は、今までタイの仮想通貨取引所を利用してトレードや界隈の変遷を垣間見てきた筆者の経験を交えながら、タイの仮想通貨事情について記載してみたい。
タイの仮想通貨取引について
まず、大前提として、タイで仮想通貨取引を行う場合、タイの規制当局であるタイ証券取引委員会(タイSEC)からライセンス付与された取引所を介して取引を行う必要があることを認識しておく必要がある。
2018年にデジタル法案がタイSECより発行され、取引所はライセンス付与されて規制された形で運営されている。
ライセンスを持っていない取引所でのトレードはタイでは違法となっている。
実はタイでは日本人や韓国人が作ったライセンスを持っていない仮想通貨取引所が数社存在している。
法律が整備された後も何か所か未だに営業を続けているが、こういった取引所では絶対に取引しない方が良い。
ライセンスが付与されている取引所かどうかは、タイSECのWebサイトから確認可能だ。常に最新情報がアップデートされている。
タイで仮想通貨トレードを行う場合、タイSECよりライセンス付与されている取引所を介して利用するのが大前提となる。
タイSECのライセンス
タイではライセンスが付与された取引所を介してトレードをするのが基本だ。
次にどのようなライセンスがあるのか記載していきたい。
タイのSECは、デジタル法案の中で下記6つのライセンス制度を制定している。
- Exchangeライセンス(仮想通貨取引所)
- Brokerライセンス(ブローカー)
- Dealerライセンス(販売所)
- ICOポータルライセンス(ICOトークン発行)
- Digital Asset Advisoryサービスライセンス(アドバイザリー)
- Digital Asset Fund Managerライセンス(デジタルアセットを用いた資産運用)
1から4は2018年デジタル法案発行当初から出来たライセンスで、5と6に関しては2021年より新たに規定されたライセンスである。
この6つのライセンスについて、それぞれの特性について順に紹介していきたい。
Exchange(取引所)ライセンス
Exchangeライセンスは、日本の金融庁が管理している暗号資産交換業者登録と同じようなライセンス制度だ。
このライセンスを保持していれば、タイのローカル通貨であるTHB(タイバーツ)と仮想通貨のトレードを行うことが出来る。
このライセンスを保持するためには、5,000万バーツ以上の資本金、その他厳しく規定されたSEC,AMLOの規定をクリアする必要がある。
各取引所は定期的に自社の財務状況や顧客資産(自社資産のコールドウォレット、ホットウォレットの分別管理)、システムなどを逐一SECに報告する必要がある。
仮想通貨の価格やトレードの状況、銀行口座への送金額なども細かく規定されている。
もし、これらの規定に従わなかった場合、ライセンスははく奪されるとしている。
実際、Huobi Thailandは規定に従っておらず、ライセンス返納命令が下っている。

どのような理由でライセンス返納命令が下ったか公にはされていない為、定かではないが、世界的なHuobiのシステムであるホワイトラベルを使っていたにも関わらずである。
如何にタイSECが厳しい条件を取引所へ課しているかが分かるのではないだろうか。
そして、ExchangeライセンスにはCrypto CurrencyとDigital Tokenの2つの区分がある。
- Crypto Currency:BTC,ETH,BCH,XRP,LTC,XLM
- Digital Token:上記以外の仮想通貨
現在Exchangeライセンスを保持しているのは、下記の通り。
会社名(サービス名) | 法人登記名 | Crypto Currency | Digital Token |
Bitkub | Bitkub Online Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
Satang Pro | Satang Corporation | ✅ | ✅ |
ERX | ERX Co., Ltd. | ✅ | |
Zipmex | Zipmex Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
Upbit | Upbit Exchange (Thailand) Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
Z.com EX | GMO-Z.com Cryptonomics (Thailand) Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
SCBS | SCB Securities Company Limited | ✅ | ✅ |
ここで何点か取引所ライセンスについて補足しておきたい。
ERXについて
ERXのみCrypto Currencyのライセンスを保持していないが、彼らはSecurity Tokenのトレードを行う取引所のため、ライセンスを保持していないのである。
Huobi Thailandについて
SECのホームページにはまだHuobi Thailandがライセンス保持業者として記載されているが、規定違反によりSECよりライセンス返納命令が下り、今後ライセンス返上(自主的)もしくは、はく奪(強制)される予定の為、このリストには載せていない。
SCBSについては
ライセンスを保持しているがまだ営業は開始していない。今後SECより開業許可が出次第、営業開始される予定である。
ブローカーライセンス
次にブローカライセンスについて記述する。
ブローカーライセンスとは、他の取引所の間にブローカーとして間に入って顧客へ仮想通貨の売買を行う事を認めたライセンスである。
日本の暗号通貨交換業者にはこのようなブローカーライセンスを定めていないが、タイではブローカーもライセンス制にしている。
大口などがOTC取引する際に大きな決済をする場合や高い流動性を供給したい場合に必要になる事が予想されるライセンスである。
このライセンスがないと他の取引所などから取引所が流動性を供給することは出来ない。もし、流動性を取引所として供給したい場合は取得する必要がある。
ライセンス付与されている取引所は下記の通り。
会社名(サービス名) | 法人登記名 | Crypto Currency | Digital Token |
Coin TH | Coin TH Co., Ltd. | ✅ | |
Bitazza | Bitazza Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
Kulap | Satoshi Co., Ltd | ✅ | ✅ |
Zipmex | Zipmex Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
Upbit | Upbit Exchange (Thailand) Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
Z.com EX | GMO-Z.com Cryptonomics (Thailand) Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
XPRING Digital | XPRING Digital Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
SCBS | SCB Securities Company Limited | ✅ | ✅ |
ブローカーライセンスについても何点か記載しておきたい。
ブローカーライセンスを持たないBitkubとSatang Pro
取引所のライセンスを持っているBitkubとSatang Proはブローカーライセンスを保持していない。
これの意味することは、この2社は顧客と顧客同士の取引しか出来ないということだ。
自社が他の国の取引所などから流動性を供給することはできず、純粋な顧客同士のトレードのみが可能ということになるだろう。
なお、これは私の推測だが、この2者ともにおそらく他社が流動性供給をしていると思っている。
なぜなら、単純な顧客同士のトレードでは成り立たないような取引高を誇っているからだ。
自社で行わなければライセンス違反ではないので問題ないのだろう。
取引所ライセンスを持っておらず、ブローカーライセンスのみ保持するBitazzaとKulap
BitazzaとKulapは取引所ライセンスを持っておらず、ブローカーライセンスのみ保持している。
これの意味することは、顧客対顧客のトレードは出来ないということだ。
顧客対会社(流動性を供給)のトレードのみが出来る。
なお、2社ともに板取引でサービスを提供している。
XPRING Digitalのブローカーライセンスの意味
XPRING Digitalは先に紹介した取引所ライセンスを持つERXの関連会社である。
ERXがブローカーライセンスを保持しない代わりにXPRING Digitalにブローカーライセンスを保持させ、ERXで流動性を供給することを目的としている。
1点気になる点だが、ERXはCrypto Currencyの取引所ライセンスを保持していないが、XPRING DigitalはCrypto Currencyのブローカーライセンスを保持している。
ERXでCrypto Currencyのライセンスがない以上、流動性を供給する場がないが、なぜXPRING DigitalがCrypto Currencyのライセンスを保持しているかはよく分かってない。
SCBSについて
SCBSは取引所ライセンス同様、これからSECの開業前審査を完了し営業する予定で、現時点では営業開始していない。
Dealer(販売所)ライセンス
次にDealerライセンスについて記載する。
このライセンスはブローカーライセンスと混同しやすく、個人的には非常に似ていると思う。
- ブローカーは、他からの流動性をそのままリアルタイムで供給する。板取引。
- ディーラーは、予め仮想通貨を事業体が保持して販売する。販売所取引(板なし)。
ブローカー、ディーラーともに手数料を載せて顧客とトレードする点は同じだが、即決済させるか(ブローカー)、一時事業体に保持させてからトレードさせるか(ディーラー)の違いのみだ。
ディーラーライセンスを保持しているのは下記2社となっている。
会社名(サービス名) | 法人登記名 | Crypto Currency | Digital Token |
Coin TH | Coin TH Co., Ltd. | ✅ | |
XPRING Digital | XPRING Digital Co., Ltd. | ✅ | ✅ |
ICO Portalライセンス
ICOポータルライセンスは、ICOトークンのプロジェクトを精査、発行までを可能とするライセンスだ。
2017年のICO時に多くの詐欺的なプロジェクトが生まれ、多くの投資家が世界的に被害にあった為、2018年にデジタル法案で定められた。
ICOポータルライセンスを保持する会社は下記の通り。
会社名 | 法人登記名 |
Longroot | Longroot (Thailand) Co., Ltd. |
T-BOX | T-BOX (Thailand) Co., Ltd. |
XSPRING Digital | XSPRING DIGITAL Co., Ltd. |
BiTherb | BiTherb Co.,Ltd. |
Kubix | Kubix Digital Asset Co.,Ltd. |
Fraction | Fraction (Thailand) Co.,Ltd. |
Token X | Token X Co., Ltd. |
現在までに1つのICOが発行されており、タイの不動産会社であるSANSIRIがXSPRING Digitalを介して不動産トークンのSIRIHUBトークンのICOを発行し、ERXで取引可能となっている。
デジタルアセットアドバイザリーサービス
デジタルアセットアドバイザリーサービスは、2021年に新しく出来たライセンスで、日本の投資助言業に似た制度である。
このライセンスを保持していれば、顧客に対して仮想通貨・デジタルアセットに関した助言を行う事が可能としている。
現状このライセンスを保持しているのは1社のみである。
会社名(サービス名) | 法人登記名 | Crypto Currency | Digital Token |
Cryptomind Advisory | Cryptomind Advisory Company Limited | ✅ | ✅ |
デジタルアセットファンドマネージャー
デジタルアセットファンドマネージャーもアドバイザリーと同様に2021年に出来たばかりのデジタル法案である。
このライセンスを保持していれば、顧客の仮想通貨資産を運用してよいとされている。
まだ具体的にどのように運営されているのか実状が出て来ていない。
現時点では、1社のみがライセンス付与されている。
会社名(サービス名) | 法人登記名 | Crypto Currency | Digital Token |
Merkle | Merkle Capital Company Limited | ✅ | ✅ |
アドバイザリーとファンドマネージャーのライセンスについては、まだ出来たばかりのライセンスのため、今後デジタルアセット事業に参入を予定している証券業者などが取得することが予想される。
ライセンスについては、以上である。
仮想通貨を使ったレバレッジ・証拠金取引は出来ないという点は、日本と比較してタイの仮想通貨関連法案の大きな違いであると言えるだろう。
仮想通貨ライセンスに関わるタイの公的機関
次にタイで仮想通貨取引を行う上で、抑えておきたいタイの公的機関を順に紹介したい。
主に下記4つのタイの公的機関が仮想通貨取引を行う上で関連している。
- タイ証券取引委員会(SEC)
- アンチマネーロンダリングオフィス(AMLO)
- タイ財務省(MoF)
- タイ歳入局(Revenue Department)
タイ証券取引委員会(SEC)
先に紹介した仮想通貨に関するライセンスはこのタイ証券取引委員会(SEC)が制定している。
各取引所は、SECのライセンス下に置かれ、厳格な規制の中運営されている。
何かしらのシステムトラブル、ハッキングなどの自社のシステムに何かしらの問題等が発生した場合、顧客に報告するのと同様にSECへの報告責任義務を各取引所は受け持っている。
また、各取引所の顧客もSECへ直接苦情などを行う事が可能である。
ライセンスを付与している以上、何か問題があった場合、SECにも責任が少なからずあるということである。
実際、2020年初頭にBitkubがSECより業務改善命令が下されたのだが、そもそもの発端は顧客からのSECへの苦情であった。
取引所の対応が悪かった、取引所のせいで何かしらの問題が起こった場合などにSECへ問い合わせが出来るので覚えておくとよいだろう。
タイアンチマネーロンダリングオフィス(AMLO)
タイのアンチマネーロンダリングオフィス(AMLO)は、資金洗浄、脱税、テロ資金などの一連の犯罪の資金の出所を操作するタイの公的機関である。
仮想通貨もAMLOの管理下に置かれる。
タイの取引所はどこもKYCを実施しなければ利用が出来ない。
これはタイに限らず、日本も世界どこでもリーガライズされた取引所であれば当然のことである。
タイでは、このAMLOが定めたKYC基準に沿って、各取引所が顧客の身元確認を行っている。

また、怪しい資金の流れもAMLOへの報告義務が発生していると考えられる。
具体的な数字は定かではないが、相当額の仮想通貨送金や銀行口座へのタイバーツ出金が行われた場合、資金の身元チェック対象となると思われる。
タイ財務省(MoF)
タイSECが定めたデジタル法案は、最終的にタイ財務省(MoF)が承認することによって施行されることになる。
実際に権限を持つのがタイ財務省ということだ。
現在Huobi Thailandがライセンス返納命令が出ているが、最終的な判断はこのMoFに委ねられている状況である。
なお、ICOポータルに関しては、財務省管轄外であり、SECの判断のもとライセンス付与されている。
タイ仮想通貨取引における税金
2018年デジタル法案が施工されたが、これはSECタイが定めており、税金についてはSECの管轄外であった。
タイの仮想通貨トレードに関する税金は、タイ歳入局が担っている。
仮想通貨トレードを行い、利益が出た場合、且つタイバーツへ出金した場合に所得税(累進課税0%~35%)として課税されるというのが筆者の認識である。
しかし、トークン発行した場合の税金についても明記がされていなかったり、タイの税金を考えるうえで重要なWithdraw holdingが規定されていなかったりとハッキリしたものではなかった。
現時点で、税金については、各業者とタイ歳入局が話し合っている状況のようである。こちらについては、明確なルールが決まり次第、アップデートしたい。

仮想通貨に関して、未だにグレーな部分
タイの仮想通貨に関連するライセンス、関連する公的機関について記載したが、実はまだグレーな部分が多い。
筆者が感じるグレーな部分についても記載しておきたい。
ライセンスを付与されていない海外の大手取引所でのトレード
タイでは取引所ライセンスを付与されていない取引所での仮想通貨トレードは違法である。
しかし、実際には多くのタイ人がBinanceやFTX等の大手取引所を利用している。
2021年にタイSECはBinanceへ対して、刑事告訴を出した。

タイSECの建前としては、ライセンス付与されていないのにタイ人に対して仮想通貨取引を提供しているということがあった事が原因であると思われる。
また、タイSECが刑事告訴した当時、日本の金融庁など世界各国の金融規制当局もBinanceへ対して同じように警告を出していた。
タイSECは他国より重い刑事告訴を出していたわけだが、これがどの程度本気なのか筆者は疑問に思っている。
というのも、ブロックチェーンを確認すると未だに多くの資金がタイの取引所からBinanceへ流れているからだ。とくにBitkubからBinanceへの送金額は多い。Binanceだけでなく、FTXやHuobiにも流れている。
本当に禁止したいのであれば、ライセンスを付与している全ての取引所へBinanceへ送金しないように命令を下せばよいだけであるのにしていないのである。
よって、現状は多くの資金が未だに海外大手へ流れ、取引が可能な状態となっている。これは日本や他国とも同じ状況ではある。
ライセンス付与されていない取引所でも現状は取引が出来る事、こういった取引所で証拠金取引も可能である。
しかし、現状グレーであることは認識しておきたい。
仮想通貨を用いた決済時の扱い
仮想通貨の決済についてもまだグレーな部分が多い。
2018年に制定されたデジタル法案では、モノと仮想通貨を交換する場合の規定が明記されていない。
仮想通貨(Crypto CurrencyとDigital Token)とタイバーツ(THB)のトレードの事は明記されているのだが、決済に関しては明記されていないのである。
また、決済時の税金についてもハッキリわかっていないのが現状である。
決済については、グレーな状態であるが、すでに各取引所は仮想通貨を使った決済のサービスを開始している、
特に顕著なのがZipmexとBitazzaで両社ともに自社トークンを決済サービスで使用している。税金がどういう形になるかも不明であるが既にグレーな中サービスは開始しているのである。
なお、Zipmexについては、visaを利用したデビットカードを今後リリースを予定している。

トークンの発行について
タイではICOポータルというライセンスがあり、このライセンスを付与された会社がトークンを発行できるとしている。
ライセンスを持っていない会社でなければトークンは発行できない事を意味する。
しかし、実際にはBitkub,Bitazza,Zipmexの3社はICOポータルのライセンスを持たず、自社トークンを発行している。
この3社はICOというより、IEOに近く取引所で即上場させるような形ではあったが、この3社以外にもGameFiのGFなどタイを拠点とする会社がトークンを発行している会社は実は存在している。
海外で発行してタイで上場すればOKなど法律の抜け穴もあり、一体何のためのICOポータルライセンスなのか不明である。
ライセンス制が存在するが実は明確な規定なく、グレーな方法でトークンを発行することが可能な状態なのである。
Memeトークン,DeFI,NFTなどの新しい技術について
タイSECは、2021年6月に下記4つのトークンのサポートを禁止するように声明を出した。
- Memeトークン
- Fanトークン
- NFT
- 取引所トークン
2021年DogeやSHIBの盛り上がり、NFTの台頭など色々な出来事があったが、タイもこれらのトークンが大変盛り上がった。
これらの熱を冷ますかのようにタイSECがこの声明を出したのだが、現状取引所はMemeトークンや取引所トークンを上場し続けている。
また、NFTもタイの著名な政治家が発行したことで話題になった。

いまいちこの声明もどこまで効力があるのか不明であり、グレーなまま取引所もユーザも進んでいるのが実情である。
以上が筆者が考える未だにグレーな部分である。
仮想通貨・ブロックチェーンを活用した新しい技術は日に日に進歩していっている為、法律が追い付いていない状況であるので仕方がない部分であるともいえる。
これは、アメリカのSECや日本の金融庁にも言えることだが、タイにおいても同じことが言え、NFTやDeFiやこれから出てくる新しい技術に対して、どう法律が整備されていくかはまだハッキリしていないのが現状なのではないだろうか。
タイの仮想通貨取引所各社の特徴
タイでSECからライセンス付与されている各社について紹介していく。
Bitkub
Bitkub(ビットカブ)は、タイ最大の取引所である。
もともとは、ゲーム会社を経営していたメンバーが基盤で、自社の取引所システムを自前で作っていることで知られている技術力が高い会社でもある。
2018年デジタル法案施行と合わせてライセンス付与された取引所で、タイでの仮想通貨のマーケットシェア90%の独占企業だ。
タイで仮想通貨トレードを行うのであれば、まずこの取引所でアカウント作成を行う事をおすすめする。
ブローカーライセンスを保持していないが、流動性はタイで一番高い。
多くの流動性プロバイダーがBitkubをサポートしている為、ブローカーライセンスを保持していなくても高い流動性を供給できているのである。
流動性が高いため、仮想通貨価格も世界の大手取引所とほぼ同額で購入可能である。
また、2021年にはタイの大手銀行であるSCBがBitkubの51%の株式を取得し、SCB参加となった。
タイの王様は、SCGとSCBというタイの巨大企業2社の株主であることで知られている。
多くは語らないが、強力な後ろ盾を得た企業に成長しているのである。
タイのマーケットをリードしているのがBitkubなのであり、まずBitkubのアカウントを作成しておけば間違いない。
なお、Bitkubについては、下記の別記事に詳細を記載している。

2022年8月追記
SCB XによるBitkub買収・投資プランは中止されたことが2022年8月ニュースになった。
SECのレギュレーションに準拠できていないこと(とくにKUBトークン)が大まかな理由だという。

買収は中断されたが、Bitkubはいまだにタイでは市場独占している状態で、アジア全体でみても取引高は高い。
おそらく今後もBitkubの市場寡占状態は続くと思われるのでSCBの後ろ盾はなくなった状態だが、これからもタイで仮想通貨取引所を利用するならば一番おすすめできる取引所であることに変わりはない。
Zipmex
Zipmexはタイ2番手の取引所である。
バックグラウンドはタイの証券会社であり、CMOはタイの財界の大物の娘であり、財界に強いコネクションを持っていると思われる。
Zipmexは、世界的に有名なAlPhaPointのホワイトラベルの取引所システムを使用している。
タイの他の取引所にないサービスとして利息サービスを提供している。
Zipmexの詳細は下記に別記事で記載したので興味があれば確認してもらいたい。

Bitkubがもしハッキングなどにあってしまった場合、Zipmexがマーケットシェアを奪うことになると筆者は考えている。
2022年8月追記
2022年5月 UST-Lunaの暴落、3ACの破綻に伴い、Celsius,Babelファイナンスも倒産に陥った。この2社に顧客のレンディング資金を預けていたZipmexもエクスポージャーする事態に陥った。
そして、SECよりCEOに対して刑事告訴される事態にまで至っている。
通常であればSECから取引所ライセンスをはく奪されてもおかしくない状態ではあるが営業は継続している。
すでに数社がZipmexの買収へ名乗りを上げており、CEOが責任を取る形(スケープゴート的に)でどこかの会社に買収される形で話が進んでいるという。
SECからライセンスはく奪されないのは大筋で買収先やSECとも話が決まっているからだろう。
今現在はエクスポージャーが発生してしまったため、おすすめできる取引所ではなくなってしまったが、どこかの会社が買収したら経営再建し復活するようにも期待している。
Satang Pro
Satang Proは2018年デジタル法案施行時にBitkubと合わせてライセンス付与された取引所である。
Binanceとパートナー契約しており、Binanceのホワイトラベルの取引所を利用している。
THBを利用してBinanceでトレードするサポートも以前行っていたことからBinanceとの繋がりが強い。
また、Satang Proの特徴としてUSDTの取引高が高い事が挙げられる。
もし、USDTを売買したいのであれば、Satang Proを利用することもありだと思う。
口座開設はしておいて損はないだろう。
Satang Proの筆者のイメージとしては、Bitkubと同じ2018年初期からライセンスを付与されているが、どうもあまりやる気を感じられない取引所である。
キャンペーンなども特に積極的に行っておらず、Binanceとパートナー契約しているのだからもっとBinanceと一緒にイベントやBSC対応などもすればよいのに何もしていない。
何がしたいのかよく分からない取引所というのが本音である。
Bitazza
Bitazzaはブローカーライセンスを保持している取引所である。
Bitazzaのベースは香港とマレーシアで、両国に法人があり、タイでは外国企業の扱いとして知られている。
そして、BitazzaもZipmex同様のAlPhaPointのホワイトラベルを利用している。
Bitazzaの特徴は、マルチチェーン対応していることである。
マルチチェーン対応はタイの他の取引所どこもしていないのだが、Bitazzaはしている。特にSECから制限されているわけではない。
マルチチェーン対応可能な事がBitazzaが対応していることからも分かるのだが、他はしていないのである。
イーサリアムの送金手数料(ガス代)は馬鹿にならない。
Bitazzaは、ユーザの事を考えて対応してくれていると思うのである。筆者のBitazzaの印象は好印象である。
口座開設しておいた方が良いとおススメできる取引所だ。
Upbit
韓国トップの取引高を誇るUpbitがタイでも取引所をオープンしている。
タイのUpbitは、Upbitグローバルと言い、タイ、インドネシア、シンガポールでビジネス展開している。
タイは、シンガポール、インドネシアについで3つ目の海外事業として開業された。
Upbitは韓国では凄い取引高を誇る。日本のBitflyerやCoincheckよりも2倍か3倍取引高が高い。
世界的に見てもトップレベルの取引所である。
しかし、Upbitグローバルについては、各国どこも失敗していると言わざるを得ない。
取引高は、まったくないと言って差し支えない。
韓国の流動性を提供できておらず、スプレッドも広く、正直に使い物にならないと考えている。
韓国のUpbitから流動性を提供できれば期待したいのだが、現状はほぼお客さんもいない取引所なのである。
Upbitは以前ハッキングにも遭っており資金を置いておくのは少し怖いというのもある。
流動性が供給されれば、口座開設しても良いがいま敢えてする必要はないと言える。
Z.com EX
日本のGMOが海外展開するZ.comもタイでライセンスを取得し営業している。
ここは今まで紹介した取引所の中でも、一番取引高が低い。
また対応しているコインの数も少ない。
同じ日本人ブランドであり、応援したい気持ちが強いのだが、現状あえて口座開設する必要はないだろう。
Kulap
Kulapはブローカーライセンスを保持している取引所だ。
Kulapは、アグリゲーター型のDEXということで売り出している。
ライセンス付与されていて、KYCも必要なのに、DEXを売りに出しているのがいまいち良く分からないのが正直なところだ。
KulapがDEXの意味が分かっているのか定かではないが、ここは本当にお客さんがいない。
同じくブローカーライセンスのみ付与されているBitazzaはお客さんがいて、取引高があるが、Kulapについては、ツイッターでもシステムやトレードについてつぶやいている人を見たことがない。
KulapはAPIもない為、どのような価格レートと流動性を提供しているのかも定かではない。
筆者もKulapのアカウントだけは未だに作っていない。
現状作る必要もないと考えている。
Coin.th
Coin.co.thは販売所をメインにビジネスをしている会社である。
2018年からライセンスを付与されて営業している老舗である。
フィリピンにも支社があり、タイとフィリピンで営業している。
販売所形式のため、筆者は利用したことがない。
OTC取引にも対応しているようだが、前述のBitazzaも提供している為、大口として利用する場合でもBitazzaの方がシステム的にも優れていると考えている。
OTC取引したいのであれば、他のブローカーライセンスを持った取引所が良いと思う。
あえて、口座開設する必要はない販売所と言えるだろう。
ERX
ERXはアメリカのelevated returnsと協力関係にあり、Tezosブロックチェーンを利用したセキュリティトークンを取引させる事を主なビジネス目的としている取引所だ。
タイではXpringでICO発行されたセキュリティトークンを扱っている。
また海外で発行された不動産トークン、REITトークンなども今後扱う予定のようだ。
筆者は口座開設しており、今後STOが活発になってきた際に利用するかもしれない。
タイの仮想通貨取引の特徴
次にタイの仮想通貨の特徴を挙げてみたい。
Bitkubが市場取引高の90%を独占
前述したが、タイの仮想通貨取引のシェアは90%がBitkub上で行われている。
2019年までは、Bx.in.thが市場の70%を独占し、Bitkubが20%、Satang Proが10%だった。
2019年9月にBx.in.thが閉業し、Bxにいた顧客をほぼ全てBitkubが持って行った。
そして、今に至るまで90%の市場シェアをBitkubが独占している状況だ。
タイで仮想通貨取引をするならまず一番に使うべき取引所はBitkubになるのである。
取引高はASEANで一番
ASEAN全てのリーガライズされた取引所の中でタイはトップの取引高を誇っている。
実は金融大国シンガポールのリーガライズされた取引所の取引高は驚くほど低い。シンガポールペアの取引高はほとんどないのが実情である。
ICO発行やクリプト事業に投資という点ではシンガポールは税金面で優れている為、圧倒的な高さを誇るがローカル通貨での取引で見ると大したことがないのである。
また、3億人近い人口を誇るインドネシアも多くの仮想通貨取引所があるが、インドネシアよりもタイの方が数倍取引高が高いのが実情である。
インドネシアもタイと似ていて、Indodaxという取引所だがほぼ市場を独占しているのだが、BTCとETHの取引高を見てもタイのBitkubの方が高いのである。
以前までは似たような取引高であったが、今はタイの方が上になっている。
タイはASEANの中で見てもクリプト大国と言えるまでに成長しているのだ。
ステーブルコインテザーの人気が高く、常に数パーセント高い
タイでは各取引所でUSDT,USDC,DAIなどのステーブルコインでのタイバーツ取引が可能だ。
中華系が多い事もあるかもしれないが、ステーブルコインの中でもダントツで高い人気を誇るのがUSDTで、USDCやDAIの流動性はUSDTと比較すると著しく低い。
またUSDT/THBの価格は通常のUSD/THBのレートより数パーセント常に高くなっている。
USDTの需要が高いことが伺える。
タイではUSDTを利用して、Binanceやその他取引所などに多くの送金が行われていることがブロックチェーンのトランザクションから見て取れる。
送金では一般的にテザーが使われているのである。
以上がタイの仮想通貨の特徴である。
次におすすめの運用方法について記載してみたい。
タイでおすすめの仮想通貨トレード
タイでは各取引所特徴があり、筆者個人的におすすめの下記パターンよっての運用方法がある。
- 単純に仮想通貨を買う場合と頻繁にトレードする場合
- Hodlする場合
- 送金をしたい場合
- 裁定取引(アービトラージ)
順に紹介していきたい。
単純に仮想通貨を売買、頻繁に売買する場合は、Bitkub
単純に仮想通貨を買うだけの場合や頻繁にトレードする場合は、他は使う必要はなく、Bitkub一択と言ってよいだろう。
一番の流動性を誇っていて、ユーザも多い。
BinanceやFTXなどの主要な海外取引所と最も近い価格で決済出来るのもBitkubである。他取引所はBitkubの価格に追従するような形になっている。
2016年から2019年あたりまではタイでもプレミア価格が発生していて1割弱価格が世界の価格と比較しても高い事が多かったが、今ではプレミア価格が発生することもほぼなくなっている。
Bitkubであれば、海外のトップの取引所の価格体ほぼ同じ価格帯で決済出来ることは日本の取引所と引けを取らない。
トレードするつもりはなく、金利で利息を得ながら運用したい場合は、Zipmex
頻繁にトレードするつもりはなく、Hodlするのであれば、BitkubではなくZipmexをおすすめする。
Zipmexでは、Zipup、Ziplockという利息サービスを提供している。
このサービスを利用することによって、毎日利息を得ることが可能なのである。
Zipmexはカストディアンに世界トップレベルのBitGoを利用している為、セキュリティレベルもトップレベルである。
筆者もかなり多くの資産を置いて毎日利息を得ている。
送金を安く済ませたいならBitazza
送金で利用する場合は、Bitazzaが最適である。
Bitazzaではマルチチェーン対応しており、USDTの送金をERC20,SOL,TRC20,BEP20から指定できる。
他の取引所はERC20にしか対応しておらず、ガス代はその時のネットワークの状況によるが少なく見積もっても10倍は違う。
送金で利用する場合、また頻繁に送金する人はBitazzaのマルチチェーンを利用するのが適切と言えるだろう。
アービトラージをしたいなら、BitkubとSatangPro
タイでは国内でまだまだ価格差が発生することが多い。
裁定取引(アービトラージ)の機会が多く発生している状況である。
裁定取引をやってみたいということであれば、BitkubとSatang Pro間でのトレードが良いだろう。
Bitkubは以前まで酷かったのだが、SECからの警告から改善されて使いやすくなっている。
この二つの取引所のAPIは比較的安定していて、価格差も頻繁に出ている。
筆者の別サイトにてタイの仮想通貨取引所のアービトラージ価格情報を下記サイトにまとめている
また、ツイッターでも上記サイトよりもさらにリアルタイムで価格情報を取得してアービトラージを検知した場合、ツイートするBotを動かしている。
タイの仮想通貨取引所を使ったアービトラージ取引を検討している方はチェックしてみてほしい。
最後に
タイでは仮想通貨取引のためにライセンスが付与されていて、規制された状態で各社運営している。
今後税制がどうなるのか、新しい法律がどうなるか定かではないが、タイのクリプト産業を潰すような規制にはならないと思っている
この点は仮想通貨の投資家としては喜ばしいのではないだろうか。
また、現状Bitkubが市場を独占しているが、今後Binanceがタイ市場に参画も予定しており競争が激化していく可能性も高い。
なお、タイは日本人にとっても非常に住みやすい国でもある。
ビザもお金を払えさえすれば取得可能なタイランドエリートという制度も国が用意している。
またこのタイランドエリートには、旧会員と言って希少価値が非常に高い資産カードも存在している。下記サイトはこの希少性が高い資産カードの詳細がまとめられている。

今後もますまず面白くなりそうなタイの仮想通貨マーケットをタイに移住してでも追っていきたくならないだろうか?